2026年7月13日

「レントゲンではそれほど悪くありませんね。」
「まだ手術をする段階ではありません。」
このように説明を受けたにもかかわらず、
「でも歩くたびに痛い」
「階段がつらい」
「夜になるとズキズキする」
と悩んでいませんか?
実際、当院には「レントゲンではひどくないと言われたのに痛みが続く」という患者さんが数多く来院されます。
「異常がない」と言われたわけではないのに、痛みの原因がよく分からず、不安になってしまう方も少なくありません。
今回は、その理由について分かりやすくご説明します。
レントゲンはとても大切な検査ですが、すべてが分かるわけではありません
レントゲンでは、
・骨の形
・関節の隙間
・O脚やX脚などの変形
を評価することができます。
そのため、変形性膝関節症の診断には欠かせない検査です。
一方で、
レントゲンでは見えない痛みの原因もあります。
つまり、「レントゲンでは軽い変形」と言われても、「痛みが軽い」という意味ではありません。
痛みの原因は軟骨だけではありません
多くの方は、「軟骨がすり減ると膝が痛くなる」と考えています。
もちろん、それも一つの原因です。
しかし実際には、膝の痛みには次のようなさまざまな要因が関係しています。
・滑膜の炎症
関節を包む滑膜と呼ばれる部位に炎症が起こると、膝に水がたまり、歩くたびに痛みを感じることがあります。
・骨の中の異常
近年、MRIによって「骨髄病変(Bone Marrow Lesion:BML)」という状態が注目されています。
骨の内部に炎症や微細な損傷が起こることで、体重をかけたときの強い痛みの原因になることがあります。
これはレントゲンでは分かりません。
・半月板の損傷
初期の変形性膝関節症では、半月板損傷が痛みの主な原因になっていることもあります。
「曲げ伸ばしで痛い」「引っかかる感じがする」といった症状がある場合は、半月板を詳しく調べる必要があります。
・神経が痛みを感じやすくなっている
長期間痛みが続くと、関節だけではなく神経そのものが過敏になり、通常より強く痛みを感じる状態になることがあります。
この場合は、炎症だけを抑えても十分な改善が得られないことがあります。
MRIで初めて分かることもあります
必要に応じてMRIを撮影すると、
・半月板
・軟骨
・靱帯
・骨の中の異常
・滑膜の炎症
など、レントゲンでは分からない異常が見つかることがあります。
もちろん、すべての患者さんにMRIが必要なわけではありません。
しかし、「痛みが強いのにレントゲンでは軽い」と感じる場合には、MRIが診断の助けになることがあります。
「まだ人工関節ではない」と「治療法がない」は違います
「まだ人工関節をするほどではありません。」
この説明を受けると、「治療法は湿布やヒアルロン酸しかないのだろう」と思われる方もいらっしゃいます。
しかし実際には、痛みの原因によって治療法は異なります。
例えば、
・滑膜の炎症が主体なら炎症を抑える治療
・神経が原因ならラジオ波治療(クーリーフ)
・骨への負荷が原因なら集束型体外衝撃波治療(ESWT)
などが選択肢となることがあります。
さらに、半月板損傷や限局した軟骨損傷、滑膜炎などでは、関節鏡手術によって症状の改善が期待できるケースもあります。
つまり、「人工関節は必要ない」ということと、「手術の選択肢がまったくない」ということは同じではありません。
当院が大切にしていること
当院では、「保存治療か手術か」という二択ではなく、
「その患者さんの痛みの原因は何なのか」
をできるだけ詳しく評価することを大切にしています。
その結果、
・PRP、体外衝撃波治療やラジオ波治療などの専門的な保存治療が適している方
・関節鏡手術による改善が期待できる方
・人工関節手術が最適な方
では、選ぶべき治療はそれぞれ異なります。
私はこれまで関節鏡手術から人工関節手術まで数多くの膝治療に携わってきました。
だからこそ、「できるだけ手術を避ける」のではなく、患者さん一人ひとりにとって最も適した治療を選択することを診療の基本としています。
まとめ
「レントゲンではひどくない」と言われても、痛みが軽いとは限りません。
膝の痛みは、軟骨だけでなく、滑膜、骨、半月板、神経など、さまざまな要因が複雑に関係しています。
また、「人工関節はまだ必要ない」と言われた方の中にも、保存治療や関節鏡手術によって症状の改善が期待できる方がいらっしゃいます。
もし、
・レントゲンでは軽いと言われたのに痛い
・ヒアルロン酸注射を続けても改善しない
・手術するほどではないと言われたが困っている
という方は、一度、膝専門医にご相談ください。
痛みの原因を丁寧に見極め、その方に合った治療法を一緒に考えていきましょう。